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突然扉から現れた女の人は、ハッとして焦り出す。
「え? 部屋間違えた? ここ、葛城だよね?」
玄関扉の部屋番号や部屋の中を覗くなど、予想外の慌てぶりにこっちが冷静になれた。
「合ってますよ。家主は今、コンビニに行ってます」
「あ、そうなの?」
安堵の溜め息をついた女の人は、次にあたしを見たので素直に名乗る。
「あたしは新田弥恵と言います。今日は部屋の掃除とか手伝いに来たんです」
「あー、アイツ家事全般ダメだからなぁ。わたしは千夏、アイツの……」
そこへ図ったかのように、葛城が扉を開けて現れた。
「ナ、ナツ姉!」
慌てて帰ってきたのか、涼んだだろうに葛城はまた汗をかいている。
それと『ナツ姉』と呼ばれるこの人が、たぶん葛城に服をくれるというファッション関係にお勤めのお姉さんなのだろう。
「ハル!」
お姉さんは葛城の肩をガッと掴んだ。
「なに、ナツ姉……」
「彼女とはでかした!」
あたし、『彼女』に昇格ですか!?
「しかも家事ができる娘なんて大歓迎じゃないか!」
お姉さん公認!?
「もう、同棲しちゃえ!」
同棲ー!?
「待って、ナツ姉! 勘違いしてるよ!」
そこで葛城は突っ走るお姉さんを止めた。
「この子は僕の生徒。掃除とか出来ない僕を見かねて手伝ってくれる、とってもいい子」
あーあ、訂正されちゃった……
少々肩を落としたあたしは、まだまだ色々話し合っているご姉弟にとりあえずあることを提案する。
「あの、お姉さんもご一緒にお昼食べませんか?」
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