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テーブルを囲んだあたしと葛城(ちなみに下の名前は春樹)と千夏さん(葛城のお姉さん)は、あたしの作った昼食を食べる。
そうめん、少し多めに茹でておいて助かった。
「ハルってば、可愛い生徒の手まで煩わせる程部屋散らかすなんて…」
「あたしが好きでしてることですから」
「謙遜しなくていいわよー。わたしなんて精々足場を確保するぐらいしかできなかったもの」
「あたしもテレビとかでたまに見る腐海のような部屋がこんなに近くにあるとは思いませんでしたけど」
「あはは、だろうね」
女二人仲良く話す中、話題の葛城はすっかり拗ねている。
「それにしてもハルも隅におけないわ」
「だから生徒って言ってるじゃないか」
千夏さんはそんな葛城を、またさらにからかう。
それに乗じて、あたしは葛城の反応を確認してみようと思いついた。
「でも葛城先生、お買い物に行ったり、お部屋で一緒に食事したり、果てにはお姉さんを紹介されたら、あたしだって勘違いしちゃいそうですよ……」
頬に手を当て、伏し目がちに溜め息をつく動作も入れてみる。
すると葛城は、少し顔を赤らめ、慌て始めた。
「い、いや……その……それは……」
思った程悪くない反応だ。
「それじゃあ、そんな二人にプレゼントでもあげようかしら」
葛城の慌てぶりを楽しげに見ていた千夏さんが、おもむろにショルダーバッグを開けて中を探り出す。
そしてそこから出てきたのは二枚の映画の前売券だった。
「知り合いが手に入れた前売券。丁度余ってたから、二人で行ってきたら?」
「「え?」」
あたしと葛城は同時に声を上げ、千夏さんと映画の前売券を交互に見る。
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