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「……い。…………おい!……おい!!」
静けさ漂う大広間。藺草の香る畳が並ぶ。
その数ざっと二十畳。
広間に敷かれた床の上、男が漸く目を醒ます。
「おっ!?やっと気がついたか。」
男が辺りを見回すと、誰かが上から覗き込む。
恐らく齢は六十前後、五厘に刈られた白髪頭と白髪混じりの無精髭。
「……此処……は?」
寝込んだ男が口を開く。
「此処は鬼住場村だ。おめぇさんは運がいい。下の河原に打ち上げられてるとこを、村の領主様に助けられたんだ。」
「……鬼……住場村……。」
良かった。辿り着いた様だ。
男が流され打ち上げられ、着いた所が目的地だったのだ。
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