タチアオイの少女

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「由紀君もそうだけどさ、野球部ってみんなMじゃない?」 「は?」 何を言っているんだこいつは!絶対今全国の野球少年を敵に回したぞ!?しかもMって? 「だってそうじゃない?クラスの野球部の人達みんな練習やだぁ~とか言いつつも毎日練習行ってヒィヒィ言いながら走り込みやってるわけでしょ?つまりそれってMってことじゃない?」 「そんなこと言ったらソフト部の鈴花だってMなんじゃないのか?」 野球部を馬鹿にしながら笑ってる鈴花に言ってやった。鈴花を追い越して僕は先に進む。鈴花もまた歩き出す。 「だったら由紀君もMってことよね?」 そう言って笑いながら鈴花は僕を追い抜いていく。中学までは二つに結っていた鈴花の髪が、ふわりと風に揺れていた。  不覚にも、鞄に引っかけた野球帽と、グローブとボールのミニチュアのキーホルダーがなんだかやけに可愛く思えた。  朝でさえ暑くなってきて、時折吹き上げる風が心地よい今日。僕は鈴花を追い越そうと歩調を上げた。  こんな毎日の通学路。  この通学路なら、なんだか毎日同じ事の繰り返しでも悪くないかな。そう思うのは、二、三メートル先をでっかいエナメルを背負って歩いている幼馴染みのせいかもしれない。  空き地に林立しているタチアオイ。  真っ直ぐに空に向かって伸びているその姿が、なんだか鈴花の笑顔に似ている気がした。
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