タチアオイの少女

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「へ?」 話し掛けられていることに気が付かなかった。 「自分から話し掛けておいて何?放置プレイ?」 そこには確かに怒っている鈴花の姿があった。昨日に増して、気温も湿度も高く感じる今朝、足元で活発に働いている蟻が気になった。 「あ、えっと……。髪!髪、切った?」 うわぁ……我ながらなんて苦しい。 「切ってない。寧ろ伸びたよ?どうしたの?ついに頭まで壊しちゃった?」 「鈴花、それ禁句。」 「ごめんごめん。もう肩は平気なの?」 話が流れただけまだ良いとするか。でもなぁ、正直キツイ。去年の夏に投げ込みやりすぎて肩壊したっていう単なる馬鹿な話なのだけど。 「うん。まぁなんとかってとこかな。今週からちゃんと部活出れるんだ。」 今日の放課後からのことを考えているだけでなんだか幸せだった。頭の中で球がバットに当たる金属音と、グローブに吸い込まれる球の音が心地良く響いた。
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