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退屈だ……
毎日が退屈で仕方がない。
全国大会目指して部活動に精を出していた頃は良かったが、それも先月の県予選で敗退した事によって熱が冷めてしまった。
周りのクラスメイト達は、やれ受験勉強に、やれ内定を貰う為の就職活動にと、至極忙しそうにしている。
だが卒業後、家業を継ぐ事が確定している俺にとっては、全く関係のない話なのだ。
年中無休で金欠病の高校三年生は、街に繰り出して遊ぶ事もままならず。
そうかと言って、家に帰った所で、配達や店番といった辺りの手伝いをさせられるのは目に見えている。
だから不本意ながらも、連日誰もいない教室でボ~ッと佇んでいる事が日課となりつつある。
「あっれ~? 慎、まだ帰ってなかったの? もう誰もいないかと思ってた」
「あん? あぁ、何だ朋美か……」
淡い栗色の髪がフワッと風になびくと、とてもいいシャンプーの薫りがした。
「あぁ、何だ。じゃないでしょ? 普通さ、誰もいない教室。で、こんな風にちょっとした恋愛ドラマみたいなシチュエーション。クラス一の美少女と二人きりになってんのに、少しはドキドキしなさいよ」
「はぁ? どこにいんだよ? クラス一の美少女がよ……お~い! 誰かいますかぁ~? お~い……ほらな、俺とお前しかいねぇじゃん」
朋美とは中学からの付き合いで、偶然にも六年間一緒のクラスだった。
「何かこんな時間に教室で哀愁漂わしちゃってさ……慎、部活に燃えてる時は格好良かったのになぁ……」
~私ね、暗いって思われてるでしょ? あ、いいの……気を遣ってくれなくても。実際、霊感とか強かったりするし~
「ん? 今、何か言った?」
一瞬、デジャヴのような……
遠い記憶の中で声が聴こえたような気がした。
「え? いや……慎の方こそどうしたのよ? ボンヤリした顔しちゃってさ」
「お、おう……何でもねぇよ」
実の所、朋美の台詞はハッキリと聞こえていたのだが……
似たような情景を過去に見た気がして、一瞬だけ記憶の中をさ迷っていた。
それと……
不覚にも『格好良かった』とい言う言葉に、少しドキドキしてしまった。
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