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その瞳から逃れるように…
僕は、膝の上で組んだ手に視線を落とした。
『いいえ…。カムイは新しい家族が
出来る方が、きっと…
幸福になれます。
僕は、あの子の側にいてはいけない。
あの子の未来を…
あの子の人生を、邪魔してはいけないんです。
僕はあの子に対して、自分を誇れ
るような生き方を…
していませんから…』
ギュッと口唇を噛み締めて瞳を閉じた。
これ以上自分の醜い部分が溢れ出してこないように、心の中に蓋をしなければ…。
‘貴方の元へ逝けなくなってしまう…’
僕は、早くこの場から立ち去らなければと、勢いをつけて立ち上がった。
『すいません…
僕、そろそろ戻らなきゃ。
お話出来て良かったです。ありがとう
ございました。
では、失礼しま……ッ…!』
突然、腕を捕まれた。
その人は、射るような強い瞳で僕を見つめる。
『…逃げんなよ。
お前…何処にいくつもりなの…?
何考えてんの?』
その人の言葉が頭の中に響き渡る…。
あの人と、‘同じ顔’をしたその人に…
こっちへ来るなと言われた気がして…
『離して下さいっっ!!
初対面のあなたに
そんな事言われたくない!
あなたには、関係ないっっ!』
堪えていた涙が、勝手にどんどん溢れてきて僕の頬を流れ落ちてく。
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