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捕まれた腕を振り払おうにも、相手の力の方が強くてびくともしない。
『離して下さいっ!!』
その人に向かって大声で怒鳴りつければ、周囲の視線が一斉に集まる。
『嫌だ』
『…はっ?』
その人は、そんな様子も全く気にする気配はなかった。
ただ真っ直ぐに…
その瞳は、目の前にいる僕だけを捉えていた。
『嫌だ…って…
どうゆうつもりなんですかっ?
ほんとに…
離し…て……っ……』
その視線に耐えられなくて、僕は俯いて、それから逃れた。
僕を掴んだその手は、力強く暖かい。
だけど、ほんの少しだけ…
震えていた…。
『……約束してくれたら…』
『えっ……?』
僕は顔を上げてその人を見る。
目の前のその人は…優しい目を潤ませて、僕に微笑みを投げかけた。
『明日、又…
俺と会う約束をしてくれたら
この手を離すよ』
『なっ…!
そんな約束出来る訳ない!』
この人は一体、何を考えているの…?
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