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2010 宝塚記念
シゲは、遠くの空を見ていた。
と言うよりも、過去の記憶をたどっていた。
98年の宝塚記念。
その年には、2頭の人気馬の主戦が武豊騎手で、エアグルーウ゛とサイレンススズカのどちらにも騎乗が可能な状況だった。
事の経緯は解らないが、豊騎手はエアグルーウ゛に乗り、サイレンススズカには南井騎手が騎乗した。
レースは、スタート直後からサイレンスが、けれん味のない逃げでペースを作った。
向こう正面から3コーナーまでで後続に差を広げた所で、スタンドからどよめきと歓声が上がる。
エアグルーウ゛は、後方の内々からレースを進め、3、4コーナー中間から仕掛ける。
直線、外に出すのに手こずるも、差し脚は強烈で、逃げ粘るサイレンスと先に仕掛けたステイゴールドを捕まえかけた所がゴール地点だった。
「GIらしい…いいレースだったな~。」
シゲは、そう呟いて、今年の出馬表を見直した。
今年の出走馬に、ブエナビスタとロジユニヴァースがいる。
どちらも主戦は、横山典騎手である。
典さんがブエナを選んだのかは、よく解らないが、ロジは宝塚記念までの臨戦過程に順調さを欠き、ブエナはヴィクトリアマイルに出走し見事、優勝。そして、宝塚記念のファン投票1位になっている。
この状況では、ブエナ騎乗を断れないだろうし、ブエナはウオッカやダイワスカーレット級の名牝で、牡馬とのGIであっても、勝てる力があると、思っているかもしれない。
いずれにせよ、ブエナとロジの出方次第で、レースの流れが決まる。
ロジに乗る安藤騎手が、前にいるはずのアーネストリーやネヴァブションをカワイがるのか、潰しにかかるのか…。
典さんの戦術をアンカツさんが踏襲すれば、3コーナーから仕掛けて、アーネストリーを潰しに行くが…。
ブエナが、アーネストリーに勝つためには、奇しくも供に典さんが騎乗していた、ネヴァブションとロジユニヴァースのアシストが必要なレースかもしれない…。
ジャガーメイルは、ブエナ次第だろう。
そう思って、シゲはまた、遠くの空を見上げた…。
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