東京日和 /小松未歩

3/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
何より気になるのは、具体的な地名が並んでいること、だと思います。 東京タワー、外苑通り、お台場、湾岸道路、大井、天空橋…と、東京の湾岸エリアの地名が登場しています。 これらは、主人公の女性目線で考えていくと意味が解ります。 まず、シチュエーションとして、東京に住む彼氏と遠距離恋愛していた主人公は、何かをきっかけに別れを迎えることになったようです。 通い慣れた東京の街を、故郷に帰るため羽田空港へと「最後のドライブ」をしている場面です。 まず始めに登場する「東京タワー」は、「夢とあなたを天秤にかけた答え」な訳ですから、東京タワーの高く伸びる支柱の部分を天秤に例えています。 結果的に夢に傾いたその天秤のせいで、夕暮れの「外苑通り」を走り羽田へ向かいます。 「外苑通り」からレインボーブリッジ経由で「お台場」を通過し、湾岸道路(国道357)に入ります。 しかし、東海・羽田周辺は渋滞で有名ですから、今日も「大井まで続いてる」んですね。 そして、未歩さんらしい感情の描き方が象徴的な最後の場面。 別れが待っているので、少しでも長く一緒にいたいのが人間の心情ですが、「少し手前の駅で降ろして」と言っているのです。 結果、「少し手前の駅」は東京モノレール「天空橋」駅であり、これは主人公の女性が、この恋愛にケリを付けるため、きっぱりと終わらせるためであると考えることが出来ます。 また、「天空橋」という、何とも夢のありそうな駅名の駅を選んだことも大きな効果を生んでいます。 未歩さん自体、神戸在住ですから、東京への憧れも含まれているのでしょうね。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!