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―もう、良いじゃないか!
誰かに任せちまえよ…っ、アオ兄ッ!
―なぁ…茜。
最後に一つだけお願いがあるんだ。
桜を見たら、俺を思い出してくれないか?
―アオ兄!何言ってんのか分かんないよ…。
溜まった涙で滲む視界を何度も何度も手の甲で拭って、オレが最後に見たアオ兄の背中は…凄く大きく見えた。
―…時は現代。
機械化が進み、教科書で見た戦国時代の風景とは打って代わって鉄骨ビルが建ち並ぶ街をオレはひとり歩いていた。
すれ違う人は皆携帯を片手に忙しなく動いている。
ぼんやりとそれを目で追っていると視界の端に写った“何か”。
数度瞬きを繰り返し、もう一度見直すもそこには何も居ない。
ただ人が行き交う光景のみ。
「疲れてんのかなぁ…オレ。」
呟いた言葉に当然反応は無い。
―只、意味有り気に揺れ動いたオレの背にある竹刀以外には。
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