君は少しも悪くない

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どれくらいの間ただ突っ立って貴方を想っていたのだろうか。 がちゃがちゃと鍵を開ける音にようやくく頭が正常に働きだした (‥、だれ?) 貴方が帰って来るのは陽が昇るよりも遅い そんなはずない、 そう頭に言い聞かせながらも無意識に貴方の姿を期待する浅はかな俺の脳内 ドアの向こうには、 俺の待ち望んだ貴方の怒りに燃えた双眼があった 怒り? いや、違う (哀しみ、かも) 「お帰り。早か‥」 早かったね、 その言葉は彼の唇の中に飲み込まれた (お帰り、ってちゃんと言いたかったな) ぼんやりと考え事をしてる合間にヌルッと遠慮なく舌が割り込んできた 「んんっ、‥ふ、ぅ‥」 深い深い口付け。 貪るようなその行為は貴方の欲求そのものなんだろう その欲求を満たしたいのは俺ではなくて、彼なんだろうけど あまりにも長い口付けに脳内で危険信号。 貴方の胸板を叩いてみたけど離してくれないところを見ると、 俺を殺すつもりなのかな、なんて一瞬ホンキで考えた (キスで窒息死なんて、素敵かも) 貴方からのキスで貴方を感じて死ねたらどんなに幸せだったろうか、 けれども貴方は唇を離してしまった その代わりに欲求が手から伝わって俺の身体を滑る。 触れられた所からジワジワと熱が帯びていくのは狂っている証拠? 貴方は、俺の向こうにいる彼を見てる 貴方は、俺の向こうで笑う彼を愛してる そう、そんなのわかっている。 それでも、貴方が俺をこれっぽっちも愛してなくても 貴方に求められるとカラダは愚かで 欲求の為に身を差し出す 神様、試さないで -
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