沙弥

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「まさか、ここまで速効で動いて戴けるとは。やはりあなたは恐ろしい方だ」 「お前の感想なんてどうでもいい。沙弥を早く出せ」 「紙に書いてあったでしょう。それは明日までのお楽しみです」 「・・・・・何故、僕にこんな話を持ちかけた?」 「以前も話した通り、ただの好奇心です。人の子の愛がどれ程のものか、確かめてみたかっただけですよ」 「満足したのか?」 「ええ! 満足も満足、大満足ですよ! あなたがいる限り、沙弥様に死は有り得ないと悟りましたね!」 「神のはしくれが、こんなことをしていていいのか?」 「・・・・・神なんて名ばかりです。人を救うと言う建前のもと、ただ自らの下世話な探求心を満たしている道楽者に過ぎませんから」 「・・・・・そうか。なら、もうお前に用はない。消えろ」 「仰せのままに。・・・・・良いものを見せていただきましたよ・・・・・?」 最後に卑屈な笑い声を残して、死神は消えた。 自らの言葉に縛りつけられているかのように、最後までとことん下世話な男だった。
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