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山々が取り囲む深い森の中、虫や小動物さえも息をひそめている。
日の光は薄暗く、水は澱み瘴気を含んだ空気は人間であれば数刻で死に至る。
かろうじて天井だけある、壁の無い木でできた掘っ立て小屋の床に二匹の生き物が蠢いていた。
「よぉ、知ってるか?」
ブヨブヨとした肉の塊がしゃべった。
「ほう、しらね」
仰向けに転がっている骸骨が答える。
「まだ、言ってねぇよ。ぼけぇ。
魂魄喰いの爺さんが戻ってきたんだとよ」
くぐもった様な声だ。
空気の抜けたような声で骸骨が言う。
「ほう、里へ下りてったんじゃねのか」
「あー、良くはしらねぇけどよ。
だいぶ手酷くやられちまったって噂だよぉ」
「ほう、あの爺さんがね。
俺らじゃ、結界の外に出る事もできんのに、自由に行き来できる爺さんがね~」
仰向けで目も無いので、起きてるのか寝てるのかもわからない。
「それとよぉ。
『はじまりの井戸』に新しい仲間が増えたそうだぞぉ」
「ほう、久しぶりじゃねぇか。何十年ぶりだぁ?」
「さあな、覚えてねぇ」
「ほう、どんな奴だ?」
「色が黒くて髪の毛クリクリして、人間の子供みたいだとよ」
「ほう、俺らには関係ねぃけどなぁ」
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