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「シゲさん!もう1軒行きましょうよぉ」
会社の後輩の横山誠一(よこやま せいいち)が俺にぐでっと寄り掛かりながら言う。
息が相当酒臭い。
明日は仕事が休みだからということで、久しぶりに街に飲みに来たところだったのだ。
「俺は酒はもういいよ」
横山ほど酔っていたわけではなかったが、何だかそれ以上飲む気にならなかった。
「シゲさんがそんなん言うの、珍しいっすね~。あ!わかった!!」
まるで漫画のように大袈裟に手を叩いて横山が言う。
「さてはシゲさん、酒よりもアッチがいいんでしょ~。このス・ケ・ベ☆」
「はぁ?」
ニヤニヤしながら言う横山に、俺は思わず素っ頓狂な声を出した。
「とぼけたってダメっすよ!大丈夫!俺、イイトコ知ってんすよ。最近入った娘(こ)がまたカワイくて…」
やっと横山が何のことを言ってるか理解した。
スケベはどっちだっつ-の。そういうとこばっかり通いやがって…
ちなみに、俺も横山も残念ながら独り身だ。
「そんなら一人で行ってこい!俺は帰る!」
横山も帰ると言うかと思いきや、「じゃ、遠慮なく♪」とスキップでもしそうな軽やかな足どりでそういう店のある通りへ向かう。
その後ろ姿を見送りながら、俺は深くため息をついた。
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