『第二部・序章』

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   全身を無地の黒い服装で統一した、闇に紛れる為の格好の男。身長一九〇センチはある大男が伏せていた顔を上げる。 「ロンドン支部が所属不明の能力者たちに襲撃され、その被害は一〇〇〇人を越えています。襲撃者のうち二人は生け捕りに成功しましたが、いずれも尋問前に奥歯に仕込んでいた毒物で自殺しています」  大男の報告が終わると、今度は白地に桜色の花のような模様が描かれたキャミソールに赤地に黒のチェック柄のスカートという格好をした黒髪の少女が顔を上げる。 「イタリア支部もロンドン支部と同じ。所属不明の能力者に襲撃されて二〇〇〇人近い仲間が殺されたわ。襲撃者の生け捕りには……、ごめんね。全部ぶち殺しちゃった」  てへっ、と笑っているような声を出すが、彼女からは悔しさが滲み出していた。  それだけで分かる。怒りに身を任せて殺したのではなく、加減して戦えば自分が殺されていた。つまり殺害『させられた』のだ。
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