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前の二人の報告が終わり、残った見た目だけでは性別不明の、顔も見えないくらい深くまで被れる黒いフード付きローブの人物が顔を上げる。
「ロシア支部も襲撃を受けた。こちらも所属不明の能力者によるもの。その被害は……、全滅だ。俺だけが報告の為にと逃がされた」
「全滅……っ!」
声の低さから男だと分かるが、その男の報告に感情を必死に殺していた亜里栖も無反応ではいられなかった。
事前に報告を聞いていたが、それでも信じられなかったのだ。今までは。
亜里栖にとって各支部にいる隊員は使い捨ての駒ではなく、自分を信じて命を預けてくれている替えの利かない大切な者。
特に彼らの家族、友人、恋人にとっては代わりなどいない。
そういう心を悲しみから守るのも自分の仕事だと考えていたのだから尚更である。
「でもさ、」
報告を終えた少女がローブの男の報告に口を挟む。
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