月光の語り部

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「おめぇも今回ので分かったはずだぞ。 この世界で半端者は害しか生まねえ。 ましてお前は世間知らずのガキだ。 そんなお前がカタギと関わってもろくな事はないんだ。 勘違いするなよ、今回お前が五体満足でここにいるのは青龍や雀のおかげじゃねぇ。 お前は玄武組の看板に守られてきたおかげだ。 決断しろ。答えは0か100だ。50はねぇ。選択肢は2つ。 カタギからの縁をきり玄武組として仁義を通すか、 今まで散々世話してきた家族を捨てて、見ず知らずの無個性の集まりに所属するかだ。」 全身に電撃が走ったような感覚だ。まさに気圧されている。 だが、そんなことは百も承知だ。でも、俺も引けないんだよ。 心の中である言葉を復唱した。 …負けられないんだよ。 「…確かに、半端者は弾かれる。しかも俺は極道としても四分の一人前です。まだ、半端者にもなれていないのかもしれません。 最初は私もこの世界だけで生きていこうと思っていました。でも…」 「でもなんだ。」 …夫 「トラチャンって呼ばれたんです。」 「はぁ?」 …丈夫 「誰も近寄らない…みんなが、わ…俺を避けて通った道で俺のことをトラチャンって呼んで横を歩いてくれた奴がいたんです。 初めてでした。始めは戸惑いました。 でも、今思えば嬉しかったんだと思います。 誰かが俺を恐れないでいてくれる。隣で笑っていてくれる。それがたまらなく嬉しかったんです。」 『大丈夫だよ』 …あぁ、大丈夫だ。大丈夫だよ、初島。 「…もぅ誰にも怖がられたくない。 でも親父や母さん、殿さん達とは一緒にいたい。 だから俺は、 月に隠れたの闇じゃなくて、月にかかる雲を払う夜風になりたい。 仁義が通っていないのはわかってる。でも俺は…。」 そこから先は記憶がない。 後に親父に聞いたら、組長の岩の様な拳が眉間に突き刺さり、一瞬で卒倒したらしい。 そして、 『全て貴様の監督不足だ青龍。貴様は若頭から平に格下げだ。 虎彦にしっかり教育し直せ…カタギの現実を見せて、今日の事は白昼夢の世迷い言だったと分からせろ。 所詮の高校なんぞ行かせても、この根性無しでは続かんからな。すぐに音をあげて戻ってくる。 それまでは破門だ。』 とのことだったらしい。 要約すると、 『家をでるなら通ってよし。嫌になったらいつでも帰ってこい。』 とのことらしかった。
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