嵐の前の静けさ

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「で、学校の名前がこれだ。」 実に誇らしげに親父(婿養子)は腰に挟んでいた冊子を取り出した。 どうやら高校のパンフレットらしい。 別に自分が編纂したわけではないのに何を偉そうに……。 そうして佇んでいる父親を見れば、実に父親らしい姿であったような気がする。 所々釈然としない部分はあるものの、それ以外はとくに納得だしな。 まぁ、それだけ勧める訳なのだから、今からヤクザの現場に向かうよりも利益のあることなのだろう。 そうして鼻息荒く、父親はその校名を示したパンフレットを読み上げようと息を大きく吸い込んだときだった。 「あんたどこよ早く来て‼」 母の声だ。 「は、ははははぃぃぃぃ」 溜めた息を思いきり吐き出しながら、 まるでアメリカンコミックを見ているような慌て方を見せると、まるでサボっているところを主に見つかった召し使いのように、 親父(婿養子)はすさまじい勢いで階段をかけおりていった。 その姿をさめざめと見送りながら、 落としたパンフレットを拾い上げ、その表紙に目を落とした。 気味悪いほどの水色の空を背景にして、 気味悪いほどに真っ白な校舎が我が物顔で映っている。 俺にはそれが、どこかの刑務所の様に見えた。 「都立大空高等学校」 と表紙には書かれていた。
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