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それどころか付き合ってる子にだって抱き締められたことはない。
どきどきして頬が熱くなった。
私が少し身をよじると、初めて気づいたように「あ、ごめん。つい」と体を離した。
またバスが揺れる。
咄嗟に泳いだ手を河合先輩が掴んで、自分の制服の裾に導く。
「ここ、ちゃんとつかまってな」
「……はい」
「何時に行けばいい?」
「じゃあ6時に」
「オッケイ」
それから、また留学話を続ける河合先輩の制服の裾を私はずっと掴んでいた。
なぜか胸のどきどきは収まらなくて、ちょっとだけ居心地が悪かった。
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