ドライブ

2/8

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
河合先輩が右ウィンカーを出して海沿いの道に入る。 「どこまで行くんですか?河合先輩」 「もう先輩じゃねぇよ。同じ高2だし敬語もなし。いいな岡田」 「え、と。じゃあなんて呼んだらいいですか?」 河合先輩は私の頭をくしゃりと撫でた。 「敬語なし。名前でいいよ」 「……テル君?」 「うん。いいね。それでいいよ。岡田」 私にテル君と呼ばせるくせに、私のことは名字で呼ぶ河合先輩に、なぜか心が焦れた。 「どこまで行こうかなぁ……行きたいところ、ある?」 「……特には」 「岡田って男の車に乗るの、初めて?」 「え?」心臓がぴゅんっとスキップする。「そう言えば……初めて……です」 河合先輩が私に顔を向けた。 え。前、見ててください。危ないですけど。 「です、なし。敬語は絶対になし。オッケイ?」 言葉にすると敬語になりそうで、うんと頷いてみせる。 河合先輩はふふっと笑った。 その声が耳の中で聞こえたような気がして、くすぐったかった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加