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河合先輩が右ウィンカーを出して海沿いの道に入る。
「どこまで行くんですか?河合先輩」
「もう先輩じゃねぇよ。同じ高2だし敬語もなし。いいな岡田」
「え、と。じゃあなんて呼んだらいいですか?」
河合先輩は私の頭をくしゃりと撫でた。
「敬語なし。名前でいいよ」
「……テル君?」
「うん。いいね。それでいいよ。岡田」
私にテル君と呼ばせるくせに、私のことは名字で呼ぶ河合先輩に、なぜか心が焦れた。
「どこまで行こうかなぁ……行きたいところ、ある?」
「……特には」
「岡田って男の車に乗るの、初めて?」
「え?」心臓がぴゅんっとスキップする。「そう言えば……初めて……です」
河合先輩が私に顔を向けた。
え。前、見ててください。危ないですけど。
「です、なし。敬語は絶対になし。オッケイ?」
言葉にすると敬語になりそうで、うんと頷いてみせる。
河合先輩はふふっと笑った。
その声が耳の中で聞こえたような気がして、くすぐったかった。
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