言えない二文字、伝えたい五文字

10/12
前へ
/27ページ
次へ
翌日、いつも通り学校に行く準備をして階段を降りると、父が玄関にいて、靴を履いていた。 母が父に鞄を渡すと、父は行ってくると言ってドアノブに手をかけた。 ちょっと気まずかったが、俺は父に言った。 「父さん。行ってらっしゃい」 すると、父は俺を見て微笑むと、扉を開けて仕事に出掛けた。 母は俺をチラッと見ただけで、直ぐに顔を背けた。 昨日のこともあって、気まずいのだろう。 俺は母にも挨拶をして、朝食を食べに向かう。 母からの挨拶はなかった。 あれから3日。 父からまだ返事はない。 俺はいい加減痺れをきらして、父に直接話を聞くことにした。 聞くのは父が寝る前。 父は寝る前に読書をするのが習慣になっている。 母は父より先に寝る為、父は1人でいるから、この時間帯がチャンスだと思った。 俺は音をたてないように、リビングに向かう。 ドアのガラス窓からリビングを覗くと、思った通り父は一人だった。 しかし、読書はしていない。 腕を組んで、目を閉じていた。 寝ているのだろうか。 テーブルには、白い紙が一枚。 俺は気にすることもなく、静かに扉を開け、部屋に入った。 やはり父は寝ているらしく、俺が部屋に入っても、体勢は変わらなかった。 俺は起こそうとしたが、白い紙が目に入った。 …その紙は、信じられないものだった。 離婚届。 「………ぇ…?」 離婚届? 俺は驚きのあまり、体のバランスを崩してその場に座り込んだ。 頭が、真っ白だ。 俺はしばらく動けずにいた。 →
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加