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「和也、祥君の家に行くわよ」
母はスッと立ち上がり、玄関へと歩き出した。
俺は慌てて追いかけた。
「母さん…聞いてくれよ!俺達は真剣に付き合ってるんだ!」
「何を言ってるの!同性同士の恋愛なんて、いつまで続くか分かったもんじゃないでしょう。世間ともどうやっていくつもりなの!?」
確かにそうだ。
この恋はいつまで続くか分からない。
でもそれは、異性恋愛でも同じじゃないのか?
俺達は周りと少し違っているだけで、そんな変わりはない筈だ。
俺達は恥ずかしがるような、後ろめたくなるような、中途半端な恋愛はしていない。
「そんなの分かってる…。けど俺達は本気だよ」
そう言うと、母は泣かずに、次は険しい顔をした。
怒っているような、嫌悪しているような表情。
そして大きな溜め息をついた。
「私の知り合いに何人か同性愛者がいたけど、みんなうまくいかなかったわ。全員ね。これを知っていて、和也のことも受け入れろっていうの?」
「俺達は違う」
「いいえ。同じよ」
その言葉に、流石の俺もムカついた。
どうして決めつけるんだ。
俺が更に反抗しようとした、その時、玄関の扉が開いた。
「ただいま。…って、2人とも玄関前でどうしたんだ一体」
父が、帰ってきた。
なんというタイミングだ…。
俺は父を見つめるも黙ったままだった。
それは母も同じ。
父は異変に気づいたのか、静かにサッと靴を脱ぎ、苦笑いをして言った。
「取り敢えず、リビングに行こうか。話はそれからだ」
「そうね…」
2人は直ぐにリビングへと移動した。
俺も少し遅れて向かった。
脚が震える。
廊下を歩いた時に軋む音にさえ、俺は恐怖を感じた。
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