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リビングに着くと、ソファーに両親が並んで座っていた。
母は俯いていて顔が良く見えない。
良い表情をしていないのは確かだ。
父はスーツの上だけを脱ぎ、しっかりと顔を上げて座っていた。
俺はそんな2人を一瞥した後、2人の向かいのソファーに座った。
父は咳払いをすると、話を切り出した。
「それで、何があった。あの雰囲気じゃただ事じゃないんだろう」
「………お、俺…」
怖い。
母のように猛烈に反対されるのではないか、罵声がくるのではないか。
そんな恐怖と不安で言葉に詰まってしまった。
父が俺を見ている。
言葉を待っている。
この状況に、この圧迫感に押し潰されそうだった。
しばらくして、俺はやっと言葉を発した。
「付き合ってる奴がいるんだ」
父は目を見開き、安堵したかのように苦笑いした。
そして「なんだ~」と大きく溜め息をついた。
「そんなことか。ヒヤヒヤしたじゃないか。俺が反対するとでも思ったのか?ははは!」
「違「違うのよあなた」
俺の言葉を遮って母が言った。
父は笑いを止め、母を見た。
母はギュッと両手を握りしめ、口を開いた。
今度はしっかりと顔を上げていた。
「祥君なのよ」
「…どういう意味だ?」
「俺が付き合ってるのは祥なんだ」
父は、先程よりも目を見開き、固まった。
「俺、祥が好きなんだ」
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