言えない二文字、伝えたい五文字

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「彼女は知ってるよ。お前とのことを全て話した。招待状を送るっっていってもOKだった」 「理解してくれるいい彼女さんって訳か。いや、結婚するから奥さんか?」 俺は少しばかり皮肉を込めて言った。 和也は俺を見てフッと笑うと、グラスを手に取った。 そして直ぐに真顔になる。 「言った時は冷や汗かいたよ。偏見する人は少なくない」 彼女なら大丈夫だと思ってたけどね。そう言うと、和也はグラスに入っていた水を飲み干した。 残った氷が、カランと音を立てる。 俺は何故かイライラした。 頼んだホットコーヒーが運ばれてきた。 香ばしい香りが鼻を掠める。 ウェイトレスは、ついでに和也のグラスに水を注いで去って行った。 俺はウェイトレスを横目で流すと、溜め息を漏らす。 すると和也が口を開いた。 「お前は彼女いないのか?」 「彼女?彼氏の間違いじゃなくてか?そんなのお前がよく知ってる筈だけど」 「………」 急に黙った和也に、今度は怒りが沸いてきた。 俺がゲイだと分かっていて聞いたのはコイツは。 彼女なんて出来る筈がない。 作ったところで長続きしないことなんか目に見えている。 好きでもない奴なんかと付き合ってもしょうがない。 俺はまだお前が好きなのに。 こんな自分にもイライラしていた。 いつまでも引きずっている自分にイライラする。 もう終わった恋だ。 あの時に別れて、とっくに終わった筈なのに。 どうして。 俺の中にあり続ける、お前への恋心がどうしても消えない。 「恋人なんかいねーよ」 「……そうか」 どちらの声も、小さかった。 →
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