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和也は俯いてまた黙りだした。
俺はそれを見ながら、コーヒーを一気飲みした。
熱くて舌がヒリヒリしたが、そんなの気にならなかった。
一向に話す気配のない和也にしびれを切らした俺は、店を出ようと荷物に手を掛けた。
すると何故か和也も急にバッグを漁り出し、ある物をテーブルの上に置いた。
真っ黒い布袋で、CDケースくらいの大きさだ。
中に何か入っているようだ。
「何だよこれ」
「見れば分かる」
和也は顔を上げて、ゆっくりとそう言った。
その言葉につられてか、俺もゆっくりと袋に手を伸ばす。
和也の視線を感じながら、慎重に袋を開けた。
しかし、影になってその「何か」が良く見えない。
面倒くさくなった俺は袋を逆さまにした。
すると、光る何かがコロッと転がって落ちる。
俺は目を見開いた。
「懐かしいだろう?お前が俺にくれた指輪だ」
…綺麗なシルバーリング。
俺がまだ高校の時…俺達が付き合っていた頃に、和也に贈った指輪だった。
とっくに捨てたと思っていた。
何故未だに持っている?
しかもこんなに綺麗な状態で。
まるで新品のようだ。
いや、そんなことよりも…
なんで今こんな物を出すんだ。
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