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俺が言葉を失っていると、和也は指輪を手に取った。
そして、まじまじと見ると何故か嬉しそうな顔をした。
意味が分からない。
時折、照明に反射した光がチカチカと目に入って鬱陶しい。
まるで己の存在を俺に見せつけているようだった。
指輪を袋の上に慎重に置くと、和也はおもむろに話し出す。
「親にバレたあの日から一週間くらい前にくれたんだったよな。嬉しかったよ本当に」
「…おい」
「その時の祥は顔が真っ赤で面白かった」
「おいってば」
「祥が直接はめてくれ…」
「和也っ!!!」
話を止めない和也の言葉を遮るかの様に、俺は大声を上げた。
そしていつの間にか、俺は立ち上がっていた。
和也は大して驚くこともなく、平然として俺を見上げていた。
視線が痛い。
他の客なんて別にもう気にしちゃいない。
和也の視線が、痛い。
いや、それよりもムカつく…
すんげームカつく
「とにかく座れよ」
「……チッ」
俺が小さく舌打ちして座ると、和也は大きな溜め息をついた。
「周りの視線が痛いなぁ」と言って、和也は苦笑する。
そして、両手の肘をテーブルにつけ、手を組み俺を見る。
いつになく真剣な表情から、これからの会話が重くなることを悟った。
「お前も言いたいことがあるだろうが、まずは俺の話を黙って聴いてくれないか」
「………」
俺が黙ると、無言を肯定と判断したのか、和也はゆっくりと話し出した。
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