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(和也side)
甘酸っぱい高校時代。
正に当時が青春だった。
勉強して、部活をひたすら頑張って、進路に頭を抱えて。
そして恋をした。
俺は、周りとは違った道を辿っていたかもしれない。
同性との恋愛なんて、今考えたら、一体どこで道を外してしまったのかと。
けど、幸せだった。
彼との…祥との過ごす時間は本当に楽しくて、夢を見ているんじゃないかと思うくらいに幸せだった。
あの日までは。
「和也、ちょっとこっちに来なさい!」
高校2年の2月。
親に全てがバレた。
夜、部屋にいた俺は、急に母から呼び出された。
何かと思いながらも、素直に直ぐ母のもとへ足を運んだ。
すると、目に涙を溜めながら、もの凄い形相で母が電話の前に立っていた。
その姿を見た瞬間、「大変なことが起きる」と思った。
そして、俺が話しかけようとした瞬間―――
バチンッ
鈍い音。
俺は母に頬を叩かれていた。
「信じられないわ!和也、あんた祥君と付き合ってるんですって!?」
「………え?」
何。
何だ。
頬が痛い…一体何が起こった?
今、何が起こっている?
「ついさっき祥君のお母さんから電話があってね、あんたと祥君が真剣に付き合ってるって。いわゆる男女の仲の意味で付き合ってるって。何かの間違いだと思ったけど祥君が認めてるって聞いて……っ…あんた達…」
そこまで言うと、母は涙を流してその場に座りこんだ。
俺はそんな母を見下ろしていた。
足が震える。
手のひらに冷や汗が滲む。
俺はただただ、泣きじゃくる母を見続けていた。
どうしたら良いのか、どう言葉を掛けて良いのか分からなかったのだ。
俺が何か言葉を発した後、母がどんな反応をするのか怖くて動けなかった。
だが、そんな中ではっきり分かっていたことは、「母は俺の恋愛を良く思っていない」ということ。
そしてこの先、良い方向へと転ばないこと。
俺は、目を閉じて歯を食いしばった。
母の涙を見たのは、この時が初めてだった。
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