『花筐(ハナガタミ)』

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《東の国で  大蛇(オロチ)が女を孕ませた  異形の血を受け  生まれた赤子  長じる程に  容(カタチ)を変えて  人を誘う妖しの美貌  鋭い爪牙は白銀に閃き  酒を好み人肉を食らう  国を追われ、山に籠もり  町に降りては人を攫う  悪鬼の所業  もうその鬼は  人の心を  忘れ去ったのだろうか》   紫に煙る 霞の衣 鬼住まう 山の頂き 月夜に纏う 薄衣(ウスゴロモ) 鬼は闇の甍(イラカ)を 跳ね回る 呑めよ歌え欲は湧き水 この身踊らせ魔性の宴 抱く虚ろ 不意に過(ヨギ)り 足を運ぶは 霞流れる川岸の女   「……私を解放して下さい」 「それは出来ない」 「何故?……何故ですか?」 「……それは…………わからない」
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