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「大人しく有り金全部出せ!でないとこいつの命が無いぞ!」
まだまだ現役で働けそうな若い男の声がヘルメットの中から聞こえる。
怒鳴られた中年の店員は目を白黒させて、どうしたらいいか分からない、といった感じだ。
それにしても若者が強盗なんて犯罪に走り、必死に働いているのは定年を過ぎておそらく退職したであろう男性だなんて、何て寂しい世の中になったんだろうか。
「わ、私の一存では…」
「じゃあオメーのせいでコイツが死んでもいいんだな!!」
「そ、そんな…!」
店員さん泣きそう。
やめたげて可哀想。
出来れば僕も解放して。
かちりと、安全装置が外される音がして、ようやく僕にも危機感が訪れた。
「早く金出せよ!!でねーとオメーもぶっ殺すぞ!!」
強盗の怒号に、店員は震えながらゆっくりレジを開けた。
「札全部!!」
「ひいっ」
慌ててぎこちない手付きで、店員は札類を全てかき集める。
後は、渡して、それで
終わる。
僕は、悪いとは思いながらも安堵しかけていた。
(助かった)
「そこまでだ」
突然入口を塞ぐ様に、謎の声と人影が現れた。
しかもそれが一人では無く四人もいる為、自動ドアが閉まりたそうにガッ、ガッと隅っこで短く往復している。
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