24人が本棚に入れています
本棚に追加
今日もまた僕の前には朝食が出されない。
「あら蜃気郎、いつの間にいたの?いるならいるって言ってよ」
そう言って母親はようやく僕の前にトーストの乗った皿を置いてくれた。
だから僕は誰よりも先に…いいや、面倒臭い。
バターも塗らず、プレーントーストをかじりながら僕は昨日の奇怪な出来事を思い出していた。
---------------------------
「これって…」
「撃たれた瞬間に、慌てて掴んだから火傷しちゃったんだよ、やぁ失敗失敗」
照れ笑いをしながら髪を掻き上げる仕草は確かに様になっているが、シャレにならない事態が今目の前に存在しているのだ。
「弾丸を掴んだって言う気ですか」
そんな馬鹿な。
「良い子の皆は真似しちゃ駄目だよ」
出来るかっ!!
僕はもう一度弾丸をじっくり見た。
線条痕が残っている。
確かにこれは銃から発射された後の弾丸だ。
でもあの時撃たれた物かどうかなんて…と思ったが、彼が無事であるのと、真新しい火傷痕を説明する簡潔な答えは、最も常識からかけ離れた目の前の現実しか無い。
「…早く、冷やさないと」
搾り出す様に何とか言葉を紡ぐと、男子隊員は
「心配してくれて、有難う」と、日野とはまた違う、いわゆる王子様スマイルで返して来た。
かぁ、と顔が熱くなるのが分かった。
笑顔は駄目なんだって!
「はっ、早くあの長官の所に戻りなよ…」
思わずついて出た言葉に、男子隊員は急に纏う雰囲気を変えた。
最初のコメントを投稿しよう!