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下駄箱で靴を履き替えようとして、腰を屈めた時、僕の視界に黒の革靴が入って来た。
ローファーでは無いし、サイズもデカイ。
誰だと思って顔を上げると、僕の真横に、およそ公立高校には不釣り合いなブランドスーツで身を固めた男が立っていた。
「……!!」
僕は目を見開き、相手を凝視する。
適当に流した金髪、まっすぐ通った鼻筋、自信に満ちた輝きを放つ黒い瞳、狡猾そうな薄い唇。
日本人顔でカラコンも入れず金髪にするイケメンミドルにはそうそう出会わない。
(長官男…!!)
僕が口をパクパクさせているのを見て、長官男はニヤリと笑った。
「その反応、君に間違いなさそうだな。探す手間が省けた」
探すって何!?
そんなにあのコスプレは見ちゃいけない代物だったのか?
いや確かにイタイけど。
「私について来て頂こう」
「全力でお断りします」
即答する僕に、長官男はすっと片目を細めた。
「君の意見は生憎聞いていないんだ」
ゾクリと寒気がした。
目の前の相手は、人の上に立つ人間の目をしている。
正直萎縮する思いだ。
だが、従うのは御免だ。
何故なら、痛い大人について行きたく無いからだ。
嫌だし!素で嫌だし!
「私が何故君を見つけられたか、分からないか?」
「え?」
言われて、ハッとした。
親でさえ気付かない、存在希薄な僕に、この男は普通に話しかけて来た。
日野以外で、こんなのは初めてだ。
それに、理由があるって言うのか?
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