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唖然となる僕を余所に、岸社長はおとぎ話みたいなリアルな話を続ける。
「君にも同じ様にその権利を授けよう。その代わりに新たな隊員として私の役に立って欲しい」
「いりませんよそんな権利…」
冗談じゃない。
そんな行き過ぎた権利はかえって危険だ。
目立たず平穏に生きて…
「……」
僕はふと、岸社長が言っていた事を思い出した。
「岸社長、貴方言いましたね。僕の存在感を人並みに出来るって」
「…ああ」
「…本当に、本当にそれが可能なら、僕はそれを要求します」
そうだ。
目立たず平穏に、なんて、嫌と言う程味わって来たんじゃないか。
それが嫌で、僕はこの怪しさ全開の大人について来た。
僕は微かに震えながら、それでも意地を張って岸社長を睨みつけた。
「僕を…雇いたいとおっしゃるなら、僕を変えて見せて下さい」
「変わるのは君自身の努力次第だ」
だが―と付け加え、岸社長は初めて、穏やかな笑みを浮かべた。
「変わりたいと願った君は、この瞬間さっきまでの君とは確かに違うのだ」
岸社長の言葉は、何故か小さくではあるが僕の心の底に柔らかく染みた。
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