邂逅

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「ところで数学の宿題写させて、シンちゃん」 邪悪なるイケメンが何かほざいているが、僕はそんな犯罪には荷担してやらない。 人を無視しておきながらなんたるムシの良さだろうか。 なんちゃって。 「拗ねてんの?悪かったって、な?頼むよ」 「……;」 困った様に(勿論困ってなどいない!)眉を下げて物憂げに笑いかけてくる相手に、僕は悔しさいっぱいに数学のノートを押し付けた。 「やり♪」 無邪気に笑いノートを広げるそいつを見て、今日もまたしてやられたと僕は落胆した。 奴のイケメンスマイルは今まで数多くの犠牲者を出して来た。 だからって何故僕が陥落するのかというと、僕は、昔から笑顔というものに極端に弱いのである。 それに『お願い』とか付いたら、火中の栗位なら拾ってやれる自信がある。 こいつには更にビューティー補整がかかるので余計に断れない。 だがこいつはそれを知っててやるから、僕はキッパリ断るべきなのだけれど。 「いいじゃん、またヤキソバパンおごってやるからさ」 …世の中持ちつ持たれつだ。うん。
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