邂逅

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ところでここまで来て今更言うのも何であるが。 僕の名前は霧隠蜃気郎。(キリガクレ シンキロウ) 15歳高校1年生。 忍者の末裔などでは無いし、友達100人なんて付き合いが大変そうな目標は勿論持ち合わせてはいない。 生まれながらに酷く存在が希薄な…簡潔に言えば影の薄い人間である。 それを才能と呼ぶか不運と嘆くかは、皆様のご判断に委ねたいところだ。 そして目の前の調子のいいイケメンは、中学からの付き合いで、不思議な事に僕の存在に気付く事の出来る貴重な存在である。 彼の名前は日野緋駆(ヒノ ヒカリ)。 …僕と違って何だか名前まで輝かしい。 彼と僕とは友人というよりは腐れ縁に近い。 何故なら彼と一度たりとも遊びに出掛けた事はおろかメールアドレスさえ知らない。 しかしそれに何ら不便を感じた事は無かった。 友人と呼べる人間は、僕には存在しないのだ。 「シンはほんとヤキソバパン好きだよなー」 順調にノートを写しながら、暢気に言ってのける日野に僕は曖昧に返事をした。 本当は、日野がいつも何かにつけてヤキソバパンばかりを買って来るから、何となく食べる様になっただけなんだけど。 別に嫌いじゃないから、有り難くおごられておくさ。
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