24人が本棚に入れています
本棚に追加
「シン!さっきはサンキューな」
ジュ〇ンボーイの様なキラキラした笑顔の日野から手渡されたヤキソバパンを、僕は呆然と見詰めた。
「……」
ラップは一度剥がされ、しかも微妙にかじった跡がある。
「お前、食ったのか」
「一口貰っちゃったよ、何かウマソーで」
「新しいの買い直せ。いらん」
僕がそう言うと、日野は不服そうに唇を尖らせた。
「何だよ、折角買って来たのに」
「これは僕へのお礼じゃないのか」
「そうだよ。でも別にいいじゃん一口位」
―“友達なんだから”
そう言われそうになって、僕は咄嗟に日野の口にヤキソバパンをねじこんだ。
「んぐ!?はひふんはほ!」
「お、お前が食べていいから…有難う」
僕は日野から目を逸らす様にうつ向いて、自分でも聞き取り辛い酷い滑舌でそう言っていた。
これじゃタダ働きだ。
分かってるけれど、でもそれで彼から友達宣言をされるのを回避出来るならそれで良かった。
友達なんて、安易に言わないで欲しい。
「シンは優しいなー」
遠慮を知らない食べっぷりの日野を見て、人知れず僕は安堵した。
曖昧でいいじゃないか。
顔を会わせたら挨拶する位の、そんな関係でいい。
僕は、友達なんて持ってしまったらきっとどうしていいか分からなくなってしまう。
日野には、ずっと曖昧な位置にいて欲しいと思った。
最初のコメントを投稿しよう!