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あれから数日後、
「お~い。冬影~。一緒にメシ食おうぜ!?」
「・・・」
築地は呼び掛けるが、冬影はそれを無視して、席を立つ。そして一言だけ、
「俺には関わるな。そういったはずだ。」
言い残して教室を出る。
ぽつんと一人立つ築地に優香と円谷が近づいてきて、
「もうあきらめろよ。完全に相手にしてないぜ?」
少しあきれ気味に言う。
あの自己紹介のあとの昼休みから築地は声を掛けているのだが、「俺には関わるな。」の一言で終わってしまう。
「そこまで気にしなくてもいいと思うな。そういう事もあるよ。」
と、慰めてくれる優香。
その時だった。
「あの・・・海原君・・・だよね?」
冬影の後ろの席に座っていた眼鏡を掛けた男子生徒が話しかけてくる。たしか、
「えと、一条君だよな?」
コクンと頷くと、
「冬影君と仲良くなりたいんだよね?」
「ああ。だけど話し聞いてもらえないんだよな。」
「僕、ちょっと心当たりがあるんだ。学校終わったら一緒に近くの飲食店にでもよらないかい?もちろん地倉さんと円谷君も一緒にね。」
「私は賛成!」
右手を上に突き出しOKサインをだす優香。
「べ、別にあんたなんかの為に行くんじゃないんだからね!」
と、腕を少し組む円谷。
「じゃあ、決まりだね。」
「おう。おわったらな。」
一端別れの挨拶を交わして、席につく。
席に戻りながら築地は考える。1人で冬影がいる事。自分が冬影と友達になろうとしている事は冬影にとって、不快なだけかもしれない。
でも、それでも築地はそのままでいられない。
今の冬影は昔の自分によく似ている。
だからこそ、放っておけないのだ。同情ではなく、自分と同じ同類を作りたくないのだ。
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