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第一章
2010年8月某日 20:30
「どうしようかな…」
私、東雲 甘菜(シノノメ カンナ)は困り果てていた
「家を飛び出したはいいが…」
周りを見渡せば
夜でもある都内独特の熱気
行き交う人々
「どこいこう…」
家を探したいところなんだけど
「気味悪がられるよね…」
私の性格は陰気、暗い、ネガティブ
そしておまけに人見知りが激しく、目つきがすごく悪いときた。
私の親はそれに呆れ、もう口を聞いてくれない
母はいない。6年前に癌で死んだ。
それから私の性格は現在のような性格に。
「祐兄と宏兄、心配してるかな…」
祐兄と宏兄は私の一つ上の従兄弟。
唯一、私が笑顔で話をできる人達。
「ふう……このまま野宿したほうがましかな…」
そんな事を考えていたら
「女の子が一人で野宿なんて何を考えているんだい?」
後ろから男性の声が聞こえたので、吃驚して振り返る
そこには20代前半くらい(?)の男性が、ニコニコしながら立っている
「……(し、知らない人…!)」
私は、男性を見る
目つきが悪いので、男性から見たら私は睨んでいるように写るだろう。
「ん?そんなに睨まなくていいよ。別にとって食おうってんじゃないから」
ヘラヘラ笑いながら私を見てくる
「(何、コイツ…)睨んでません。生まれつき目つきが悪いだけです」
「ふーん?ねえ、君家は?」
「…出てきました」
何、この人…
どうせ私のことなんてどうでもいいんでしょ?
なら話しかけないでよ
「そうかそうか……だから野宿とか言ってたんだな」
「ええ、私はそのつもりなので。では、失礼します」
淡々と応え、男性の横を通り過ぎようとしたら…
腕を掴まれた
「なあ、ちょっと待ってくれないか?」
「は、離して下さい!」
「まあまあ、落ち着け」
落ち着けるわけがない。
男性は苦手だ
人見知りの私にとってこれ以上の苦痛はない
「離して!」
「大丈夫、何もしない」
男性は私を抱き締め、背中をポンポン叩く
自然と私の中の苦痛は溶けていく
「落ち着いたか?」
「……」
黙って頷く
「そうか」
男性はにっこりと満面の笑みで、私の頭を撫でてくる
今までされたことのない感触に違和感を覚えずにはいられなかった
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