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クラスを出て、想太とエミリアは黙ってチャンに着いていく。
「ねぇ」
静かに、ほとんど聞こえないような声でエミリアが言った。
「朝から呼び出しなんて、少しおかしくない?普通、授業が終わってから呼び出しがかかるはずなのに」
確かに。通常、ケルクの仕事は授業終了後に行なわれる。朝から呼び出されるなんて異例だ。
「昨日の夜のうちに、何か起こった………のか?」
「ありえないとは言いきれないけど…………いずれにせよ、大事みたい」
そのような会話をしていると、「生徒会室」と書かれた部屋に辿り着いた。
中には、すでに五人のメンバーが集まっている。みんな困惑の表情を隠しきれない。
想太は、近くにいたメンバーのグラン・ダルに話し掛けた。
「グラン。何かあったのか?」
「わからん。けど、大変な事態ではありそうだな。ファミリア(使い魔)を少し放ってはみたが、校内が慌ただしい様子が伺えた」
グランは南米生まれで黒人である。背が高く、存在感のある風貌は他者を少しひるませる。だが内面は非常に優しい人物である。専門は契約で、召喚とは似て異なる能力を有している。
少しざわめきが大きくなってきたところで、チャンが唐突に口を開いた。
「一人足りないことには、みんな気が付いているな?」
そう。ケルクのメンバーは全部で八人。しかし、ここには七人しかいない。
「フライドは?」
エミリアが静かにつぶやく。
フライド・パーシェント。ルーン魔術を操る、ケルクメンバーの一人である。
誰もがそのような疑問を持ったその時、またしてもチャンが口を開いた。
「昨日。路地裏の広場でフライドは何者かに…………殺害された」
―――――瞬時に。空気が凍る。
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