march~始まりの行進曲~

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ヒュン!と僅かに空気が振動して、想太は自分のクラスの自分の席に座る。              カバンを置いて一息ついたところで、想太のまわりには数人の男女が集まってくる。              「何、アンタまたテレポートで登校?いいご身分だこと、召喚術師さんは」              こう言ってきたのは、同クラスのエミリア・ロードである。鮮やかな金髪が目立つ、強気な少女。専門は錬金術で、たまにシルバーアクセを作るお洒落な一面もある。              「うっせーなぁ、召喚者の特権だよ」              「いや、いけませんよ。そんな能力に頼ってばかりでは、足腰が弱ってしまいますから」              次に言ってきたのは、同じく同クラスのスレイブ・ヴァルサーである。眼鏡をかけた理知的な顔と、童顔で若干幼く見られる姿が印象的な占星術師である。              「僕なんて、移動手段を能力に頼ることができないんですからね」              多少むくれてスレイブが言う。それに続けて、              「そーよ、登校からして有利なんてずるいんじゃない?」              とエミリア。まぁ、この辺はお決まりな会話だから苦笑いで返すことにする。              この学園は、人種も年令も実にさまざまな人が集まる。スレイブが敬語を使うのも、実は想太やエミリアより二歳年下、15歳であるのが理由なのだが。              なぜそのような環境で普通に会話できるかというと、学園都市の敷地内は特殊な術式が施され、あらゆる言語が通用するようになっているからだ。詳細は不明だが、かなり高度な術式であるらしい。             
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