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「えッ…」
アスカも目の前の景色がぼんやり変わっていく。アスカとシオリとカオンとフウコとノゾミが隠れていた小さな小屋から視界が白い部屋へと変わっていく。
シンは周りを見渡した。もう大分みんな転送が完了しているようだ。モトキや大半のクラスメイト、そしてハセジュンやユウ、ガクがいる。
「あ…」
シンは驚いた。ガクの斬られたはずの腕がガクにちゃんとついている。ガク自身もわけがわからず自分の腕をずっと見ている。
そしてシンも自分の腹に手を当てて痛みが無いことに気付いた。腹をさするがなにも傷があるような感じもない。
「すげぇ…」
シンは周りを見ると、アスカが転送し終わり、続いてシオリの頭が転送されて現れ始めた。
シンの後ろの方にはタツルやトモヤがいる。タツルとトモヤはスーツを着ていて、トモヤは上から制服を着ているが、タツルはそのままだった。シンとタツルは目が合いお互いににやりとする。
さっきまでシオリがいた場所にはノゾミと半身まで転送されているフウコがいた。みんな割と無事のようだ。
シンは周りを見てヒナがいない事に気付いた。シンとヒナは席が隣でシンはヒナとはとても仲が良かった。
しかしシンは心配していなかった。ヒナと仲の良いマミもミナミもまだいない。おそらくまだ転送されずにさっきの商店街にいるのだろう。それより…
「ユウ君、スグルはまだ…」
わかっていたがシンはユウに聞いてしまった。クラス一身長が高いスグルがくればすぐ目につくが生憎まだ長身が転送されてくる気配はない。
「あ…なんかきた」
ユウが言う。球体からまた人が描き出されていく。シンはユウの言葉に心を踊らせたが転送されてくるシルエットを見て落胆した。
「ヒサオかよ…」
シンはぼそりと言った。
転送されてきたヒサオはスーツを身にまとっていた。唯でさえ変わり者のヒサオが黒い全身タイツと変わらないデザインのスーツを着ているのはなんとなく面白かった。女子達がくすくすと笑う。
そしてヒサオが転送され終わった次の瞬間、シンは安堵の心に襲われた。
転送されはじめたばかりで顔が見えないが身長だけでわかる。
スグルだ。生きていたのだ。
スグルが転送され終わり、きょろきょろと周りを見る。
「あァ?」
ガクとユウがスグルのもとに歩み寄った。2人とも笑顔だ。
「おかえり、スグル」
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