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そんな俺の肩をオヤジが軽くぽんぽんと叩く。気を使ってくれたに違いない。
オヤジは口を開いた。
「おぬしらの世界の尺度でここを計るのはたいへんじゃ。ひとつひとつ覚えていけばよい」
「うんうん」俺は目頭を拭った。
この涙は何の感情によるものなのかは自分でもさっぱり分からない。
バニーガールの二人もやってきて、両側から俺の太股を叩き始めた。こっちの方は事務的である。能面とみまごうばかりの無表情。叩きかたも、雑だ。
「ありがとう。もう、なぐさめてくれ、な」くらっと、俺は目眩を起こした。
「どうした」すかさずオヤジは心配そうに唇をとがらせる。
俺の腹がぐうっと鳴った。
「考えてもみたら、長いこと食事にありついていない。死ぬ前の日にインスタントラーメンを食ったきりだ。やたらと体も動かしたし、腹と背中がくっついちまう。ごちそうしてくれ」
「ごちそう、とな」
「ああ。さっき責任を取ってくれるとか言っていたが、その代わりに飯を腹いっぱい食わせてくれるだけでいい」
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