遭遇

5/11
前へ
/96ページ
次へ
「なぜ俺を呼んだ。てめぇはいったい、何者だ。ここはどこだ」俺はぶっきら棒に言い放った。  心中、怒りがむらむらと込み上げてきた。こんなオヤジから偉そうに呼びつけられたくはない。 「ここか」オヤジは欠伸しながら生返事をした。「ここは死後の世界。つまり、あの世じゃ」 「ひぇぇぇ」もしやと、淡い希望を持ち始めていた矢先である。俺はその場に泣きくずれた。「やはり俺は、死んでしまったんだぁぁぁ」 「そうじゃそうじゃ。おぬしは死んでしまった」俺を指さして何度も大きく頷く。  つづいて「わははははっ」と、腹を抱えて大爆笑。  そこで俺は我に帰った。ひぃひぃ言いながら地面を転げ回っているオヤジに詰め寄る。 「なんで、てめぇにそんなことが分かる。ここがあの世だなんて証拠は何もないじゃないか」  オヤジは今だ笑いの発作が治まらないらしい。 「ああ、それはじゃな」ひく、ひくと間欠的にしゃくり上げている。「おぬしが発した残りの質問に答えれば明らかとなるぞ」 「どういうことだ」俺は、もはやこのオヤジをぶん殴ってやりたい衝動に駆られていた。「納得のいく答えが返ってこなかったら、承知しないぞ」
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加