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「まあ、落ち着け」オヤジは前に突き出した両の手で俺を制した。「なぜ、ここがあの世であることが分かるかというと」
「分かるかというと」オウム返しに言って、俺はごくりと唾を飲み込んだ。
「ワシが」オヤジは一瞬間を置いてから叫んだ。「神様だからじゃぁぁぁ」
その勢いに気押されて俺は「ぎょろっご」などと意味不明な言語を思わず発し、またぞろ後ろにもんどり打ってひっくり返り腰を抜かした。
オヤジは立ち上がり、そんな情けない俺の姿を悠然と見おろす。「だからおぬしをここへ呼んだというわけじゃ」
「ウソだ」
「ウソではない」オヤジの口調は断定的であり、しかも、真顔だ。
有無をいわせぬ圧倒感が体から漂い出した。目の錯覚で、オヤジが何倍にもでかくなったかのよう。先ほどまでのふざけた様子がまるでない。
そこには確かに人間離れしたものがある。
俺は、唖然とした。
「信じて貰えんかのぅ」
「なら、証拠を見せてくれ」喉の奥から言葉を絞り出す。
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