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そんな俺を見て気を良くしたのだろう、オヤジは両手足を広げたムササビのような格好でぐるぐるぐるぐる旋回までやり始めた。
急降下し地面スレスレまできてふたたび上昇。またぐるぐる回るなんて芸当も披露する始末だ。
ここまでくると空中浮遊ではなく、飛行である。フンドシからは金玉がはみ出していた。
俺はうんざりして言った。「もういいから、降りてきてくれ」
神様のくせに声が聞こえないらしく、オヤジは微妙な笑みをたたえたまま空中を飛び回り続けている。フンドシは完璧に緩み、局部が丸出しだ。
俺は、ぶちキレた。
「降りてこいと言ってるだろうがぁぁぁぁぁぁ」みずからの鼓膜が破れんばかりの大声で怒鳴った。
オヤジははっとして上空から俺に顔を向けた。どうやら、今度は聞こえたらしい。
「おお。すまんすまん」ゆっくりと地上に降りてきた。「どうも何かをやり出すと夢中になってしまうたちでな」
ぺろりと舌を出し、恥ずかし気に頭を掻いた。
こいつは九十九パーセント神様に違いない。――俺の疑念は、ほぼ消え去っていた。
今、目の前にいるオヤジのしたことはどう考えても人間技ではないからだ。少なくとも俺の知っている範囲内では空を飛ぶ奴なんて、ひとりもいない。
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