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しかし、逆に言い替えるとまだこのオヤジを百パーセント神様だと認めたわけでもない。マジックの可能性を捨てきれないからだ。とてもそうは見えなかったが、いちパーセントほどの疑惑は残る。
俺はオヤジにもうひとつ無理難題をふっかけることにした。
「それじゃあ、次は俺を浮き上がらせてくれ。空中浮遊がしたい」
これが出来れば、本物である。俺にはタネも仕掛けもされてない。本人が、いちばんよく分かっている。
「さあ、今すぐ頼む」
「よかろう」
意外にもオヤジは即諾した。少々、ためらったりすると思っていたのだ。
「では、いくぞ」しかつめらしい面持ちである。「心の準備はいいな」
うん、と返事をする前に俺は地上五十メートルほどの位置に達した。それは浮かび上がるというよりも弾丸のように飛び上がったといったほうがいい。なんせその勢いで服は所どころが裂け、あまりの空気圧に俺の顔は一瞬ひしゃげたくらいである。
失禁した。
「ありがとう。うん、もういい。降ろしてくれ」俺は哀願する。
完璧に脱力してしまい、手足をだらりと垂らした状態だ。まるで張りつけにされた死体みたいなもの。なにも、楽しくない。
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