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しっかし、二度とお目にかかる事の無い光景だな。
左側に魔王様。
右側に勇者様。
絶対に会っちゃいけない二人がこうして会っちゃってんだからね。
ふと気付くと、勇者様がこちらを見て、首を傾げてる……。
はて?
何か?
「ねぇ……君の『対魔機』(アーツ)……見してもらえないかな?」
勇者様はそう言って、俺の腰に刺さっているお気に入りの相棒を指さした。
「ん? これですか?」
もちろん勇者様の頼みなど断るにもいかないので、手渡した。
勇者様はそれを食い入るように凝視して、再び首を傾げた。
いったい何を?
「別段特別な対魔機では無い……、だったらさっきの衝撃波は何?」
ああ……あれか……。
アレはなぁ……説明しようが無いからな。
敢えて言うなら……練習のたわもの、か?
「獅咆哮のことか?これは『対魔技』(アーク)じゃ無いよ」
俺の言葉に再度再び首を傾げた勇者様。
そりゃそうでしょうな。
たかが剣一本から出た衝撃波一発だけでバハムートを怯ませたんだからな。
「対魔技じゃ無い…?」
「ちょっと待ってくれ! 御主らは何の話しをしているのじゃ!?」
と、俺達の話しに首を突っ込んできた魔王様。
そりゃ……魔王を倒すための武器と武技なんて言えない。
「そう言えば、まだ名前を聞いていなかったですよね?」
俺は話しを反らすために話題を変えた。
問い詰められたら今度こそ殺されかねないからな。
「普通、自分から名乗るのが礼儀じゃろうが?」
ごもっともです魔王様。
「申し遅れました、私の名は『アラン=レイト』、この帝国の戦士です」
その通り。
じゃないとこんな戦場の真っ只中にいないよな。
では、次は妾が……、と腰を起こし、無い胸を張って魔王様は高らかに言った。
「妾の名は『イリシア=アブイーター』、この世を統べる魔王じゃ!!」
あれ?
目の前には勇者様がいて、さらに目の前には魔王様がいる。
そして、勇者様の前で魔王宣言。
これって非常に……まずくね?
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