土地神さま

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梁瀬秋広(やなせあきひろ)。 彼はこの春に中学校を卒業し、高校生となったばかりだ。 教科書で重くなった鞄や、慣れない高校での授業のせいで疲れが溜まっていたのだろう。 梁瀬は駅から家に向かう帰りのバスで寝てしまい、終点まで乗り過ごしてしまったのだ。 全く見覚えのない風景に不安を感じた梁瀬はすぐに時刻表を見た。 が、バスは30分に一本しかなく、次に来るのは30分後だった。 辺りを見回しても、コンビニなどといった暇を潰せるような店は皆無だ。 あるのは山を削って造られた道路と、山の下に広がる風原町の街並みだけだった。 道路から見下ろした街は、夕日のオレンジできれいに着飾られている。 左手には、遊園地のシンボルであるジェットコースターのループが飛び出し、その隣では大型ショッピングモールが今日最後の賑わいを見せている。 右手には、斜面にできた閑静な住宅街があり、そこでは子供たちが楽しげに走り回っているのがわかる。 『俺はいったいどれだけ寝ていたんだ?』 梁瀬はそう思った。 梁瀬のいる場所は山と海に囲まれた町並みを一望できる。 自分の家がある方角を見て、その距離を実感した。 何もすることがなく、梁瀬はバス停のベンチに腰をかける。 ふと前を見ると、山の上に続く石段と鳥居があった。 神社があるのだろう。 柳瀬は時間を確認し、その鳥居をくぐった。
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