VECTOR CROSS

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「形見だ。今は亡き家族のな」 バクがその一言を言い放つと 途端にイーサは寂しそうに顔をしかめる。 「……知ってたんですね」 「あぁ、知ってる そしてお察しのとおり、それが此処にお前を呼んだ理由でもある」 バクは持っている指輪のチェーンを指にかけ、クルクルと回しだす。 「お前は10年前にそのあまりの危険性から世界そのものから廃除された一族……首狩り族のたった一人の生き残りだからな」 イーサの赤い瞳が物言いたげにバクを睨みつける。 バクはそんなイーサにおもむろに指をさす。 「その赤い瞳……それがなによりの証拠だ かつて魔女と謳われた一族の狂気と暴虐の歴史の象徴だ」 「止めてください!!」 遮るようにイーサの叫びが部屋中に響き渡る。 悲痛に歪むその瞳には雫のような大粒の涙が滲んでいた。 それがイーサが周りから侮蔑の眼差しを向けられ、忌み嫌われている理由でもあったからだ。
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