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バクは回していた指輪をイーサに投げ付ける。
おたおたとそれを掴むとイーサは不思議そうに首をひねる。
「言ったろ、形見だって オレも……10年前、政府に消された一族のたった一人の生き残りだ」
バクはおもむろに立ち上がると窓のブラインドに手をかけ、小さな隙間から外を見渡す。
「オレの一族……桜火(おうか)族は代々、隣の国フゥールで集落を構えていた。
爆発を一族の象徴として連合のパレード用の花火から政府との紛争時の軍事支援まで様々な依頼をこなしてきた。
……表面上はな」
「表面……上?」
「そう。実際は支援どころじゃない、連合軍全ての戦略、計略を指揮する参謀の役割をはたしてた。
政府側に気付かれぬよう裏でこっそりと……」
ため息を漏らし、眼を伏せる。
ブラインドを掴むバクの手が小さくふるえる。
「まぁ……結局のところ最終的にはバレてあっという間に壊滅させられちまったんだけどな」
「……あの」
ふとイーサの方に眼を向ける。
イーサはこちらの様子をうかがうように中途半端に手を挙げていた。
「なんだ?」
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